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いたずら好きの少女

 紙でできたカボチャの被り物を深々と被って、女の子は近づいてくる。壁や柱に擦りながら、右に左にぶれて危なっかしい。
 まだ衣装に着替えておらず、デニムのサスペンダースカートを穿いている。切り抜かれた目の奥で、にんまりとした瞳が覗いていた。
「トリックオアトリートぉ!」
 そう言って、体当たりを仕掛けてくる。テレビゲームに勤しんでいた僕は、横からの攻撃に思わずぐらついた。上部に作られたカボチャの頭部は、重く響く痛みをもたらす。
 カボチャの口の薄暗がりの奥で、小さな白い歯が並んでいる。
「明日でしょうに」
 カボチャ頭を押し返すと、きゃっきゃと声を上げて後退る。
「だって兄ちゃん明日仕事でしょお」
「先払いですか」
「そうです!」
 胸を張る姿に、思わず笑ってしまう。頭が重く、後ろにぐらつくのだ。体を支えてやると、くすぐったそうにはしゃぐ。
「はい」
 傍に置いてあった袋を持たせてやる。そのままどこかへ行きそうになるので、袋を押さえた。
「ありがとうは?」
 確かめると、「あっ」と声を上げて、「ありがとうございます」深々と頭を下げた。
「よろしい」
 離すと、一目散に戻っていった。お母さんに報告へ行ったのだろう。僕はゲームの続きを始める。
 しかし、すぐに女の子は戻ってきた。一層、危なっかしく。
 すっかりめかし込んでいる。カラスのように黒いローブに身を包んで、白い腕の先には月と星とを重ね合わせたステッキを持っている。
「トリックオアトリートぉっ!」
 先程のリプレイが繰り広げられた。威力を存分に水増しして。僕はコントローラーを放り投げて、倒れ込んだ。
「もうお菓子あげたでしょ」
 僕が言うのに、女の子はあどけなく笑う。
「だってぇー」
「お菓子もらったらね、いたずらしちゃ駄目なんだよ」
「えぇー?」
「トリックはいたずらで、トリートはお菓子。どっちか選びなさいってことなんだから」
 女の子は無言だ。きょとんとした表情を浮かべている。
「まあ、いいか」
 僕は背中をポンポンと叩くのだった。起き上がって、カボチャ頭を外してやると、上気した女の子の顔。ほっぺたが真っ赤になっている。ほくほくとしている。
「トリックアンドトリートでもいいか」
「えぇ?」
「何でもないよ」
 頭を撫でると、女の子はくすぐったそうに表情を緩めた。